こうしんりれき
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振り返ると、渋面の腹心と目があった。なんだ、と問い返すと、眉間に手を当てつつ低い声が答える。
「御自ら、厨にお入りになるのはやめてください」 「いいじゃねえか。そんな大勢が押しかけてくるわけじゃなし」 来るのはあの主従のふたりだけだろ。そう笑うと、重々しい溜息が返ってきた。 「小十郎、言いたいことがあるならハッキリ言えよ」 「……なんでもございません」 言葉とは裏腹に、眉間の皺は消えない。喉を鳴らして笑いながら、澄んだ出汁の具合を見る。 「あいつ、怪我まだ治ってないんだろ?」 「そのようですな」 まだ完治していない傷をおしてまで、わざわざ奥州まで来るのは真面目なのか、律儀なのか。 「手合わせひとつできねえんだ。 それに、奥州のメシは今一つだなんて甲斐でふかれても困る」 「だからといって、政宗様が手ずから料理されなくても」 いいだろ、好きでやってんだ。 ———————————————————————— 新刊イデアより。まだ書いてますが(泣) いちゃいちゃべたべたにはならないですな、ウチのダテサナは。 むしろ仲が良いのは従者コンビ。私ダテサナ<コジュサスなんだろかと悩み中。 PR 白い頬を一筋、赤いものがつたわった。指でぬぐった彼は、喉を鳴らして笑う。 「そうでなくては」 面白くない。かすかな声音は不思議なほど音のない場に、凛と響く。 「小十郎」 「……動かないでください」 主の動きを腕で制して。目の前の少年は、笑っている。笑っているけれど———— 空気が震えるほどの殺気をおさめてもいない。 「どうした? 片倉」 血で汚れた手で軽く招く真似をして。 「主を護らねばならぬのだろう。別段、惑うこともあるまいに」 我を斬りたいと願うておったではないか。 翁の声のまま、少年がまた笑った。そのまま紅の指先をこちらに向ける。 「思い切れないようであれば……手伝ってやろうか?」 「な、にを」 震える自分の声に唇を噛む。少年は笑み、軽く空を薙いだ。 途端、後ろから聞こえる呻き声。 「っ!」 「政宗様!?」 顔を押さえてふらり、とよろめく主は、片手でこちらを制した。 「大丈夫だ、それより」 ————アイツを。 色の違う瞳は細められたまま、じっと見つめてくる。 その顔には年相応の幼さも、初めて会った時の弱さも儚さもない。 あるのはただ、むき出しの殺気だけ。 「片倉」 無愛想に吐き捨てられた名が、はりつめた空気に溶けて消えた。 ———————————————————————— 没ネタ・暴走男主。あれこれ書いて、こういう形の暴走はしないと判断したので没。 ネタ自体はまだ生きてますのでそのうち出てくるでしょう。 原稿の合間にこんなんガリガリ書いてます。
片倉さん、ケーキ焼いたげようか。
唐突に言い出した猿飛に、俺は顔をしかめた。甘いものは不得手ではないが、得意なわけでもない。 「いちごの美味しい時期になったしさ。ふわっふわの生クリームで」 にこにこと笑う顔は、相変わらず裏の意を読ませないまま。 「猿飛。どういうつもりだ。俺はケーキなぞ」 「俺の手作りでもいらない?」 得意じゃないのは知ってるんだけど。ぼそりとつぶやいて、琥珀色の瞳がこっちを見つめる。 「ま、うちには幸村さん居ますんで。作っても無駄にはならないんですが」 ねえ。思わせぶりな声音に思わず眉を寄せると、とうとう声をたてて笑い出した。 ————————————————————— コジュサス現代版@原稿中。佐助さんは戦国より若いので(現代では幸村と同い年) 年齢差がひらいてしまった片倉さんは苦労しているようです。 しかし現代はいい。使える言語に制限がない(カタカナ封じが段々辛くなってきた……)
「んじゃ、頼むね」
もし気がついて暴れたりしたら、放り出して良いからね。 一番の配下のくせに言うことは随分容赦ないなあ、と、残された少女は苦笑して。 寝ている猫を撫でるような手付きで、茶の髪にそっと触れる。 無防備に、膝に頭を預けたまま目を閉じている青年に。 「……ばか……」 ちいさくつぶやいた言葉にも、まるで反応なし。 ふわふわとした感触の髪に指を絡ませて、かすかな温みに目を伏せる。 「見張りも警護もなし、か。あの忍も知らず毒されている、といったところかな」 主も主だ。こんな得体のしれないものの膝で、呑気にぐーすか寝こけるやつがあるか。 そこで、ぴくり、と肩がすくんだ。足音の全くない誰かさんが部屋に近付いてくる。 かすかな茶の香り。なにか甘い匂いも一緒のようだ。 「まったく」 苦笑はそのままに、伏せた目がぱちりと開いた。 襖の影からのぞいた樺色の髪に、ちいさく指を口元に当てる。 忍はひそめた声で、ありがとね、御苦労さん。そう笑った。 ———————————— 4-2と4-3の間…であっているだろうか(まだ会社…確認できず) ちょこっと本性出たり女主。 「どしたの?」 声をかけると、少年はちいさく微笑んで。 「星が綺麗だな、と思って」 まだたそがれどきで、空の端にはうす赤くお天道様の名残りが残っている。 けれど彼の見上げる先には、ぽつりとひとつ、白い光が見えた。 「お、一番星」 俺の言葉ににこりと微笑んで。色の違う瞳がまたたきもせずに、また空を見上げる。 「ねえ」 なんですか、というように、彼は首を傾げてこちらを見た。 儚い雰囲気さえ感じさせる彼は、先に『竜の右目』と呼ばれる達人と斬りあった時とは、まるで別人のよう。 刀と、鞘。そう右目の旦那は言っていた。正直、俺にはどちらなのか、はっきりとは分からない。 露骨に殺気を叩き付けられればともかく、今はただの細い少年にしか見えないのに。 「佐助さん?」 いつまでも黙っている俺を不思議に思ったのか、ちいさい声が名を呼んだ。 「……君は」 此所に居て、何をしたいの。そう聞こうとしたけれど。 ちぐはぐな瞳は、ただ静かに微笑んでこちらの言葉を止めた。 「甲斐に居たひと」 唐突な言葉に耳を傾ける。少年は笑みをたやさないまま、 「貴方達のところに居た軋間の、ひとは」 彼はそこで言葉をのみこみ、また空を見上げた。 ———————————— 9章の後「浄眼の海」の前の落書き。 派生と原稿の間に本編の調整をしてますが、皆暴走癖がついててえらいことになってます。 実はまだ会社。はやく家に帰りたいです…… |
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