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こうしんりれき
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「どしたの?」
声をかけると、少年はちいさく微笑んで。
「星が綺麗だな、と思って」
まだたそがれどきで、空の端にはうす赤くお天道様の名残りが残っている。
けれど彼の見上げる先には、ぽつりとひとつ、白い光が見えた。
「お、一番星」
俺の言葉ににこりと微笑んで。色の違う瞳がまたたきもせずに、また空を見上げる。
「ねえ」
なんですか、というように、彼は首を傾げてこちらを見た。
儚い雰囲気さえ感じさせる彼は、先に『竜の右目』と呼ばれる達人と斬りあった時とは、まるで別人のよう。
刀と、鞘。そう右目の旦那は言っていた。正直、俺にはどちらなのか、はっきりとは分からない。
露骨に殺気を叩き付けられればともかく、今はただの細い少年にしか見えないのに。
「佐助さん?」
いつまでも黙っている俺を不思議に思ったのか、ちいさい声が名を呼んだ。
「……君は」
此所に居て、何をしたいの。そう聞こうとしたけれど。
ちぐはぐな瞳は、ただ静かに微笑んでこちらの言葉を止めた。
「甲斐に居たひと」
唐突な言葉に耳を傾ける。少年は笑みをたやさないまま、
「貴方達のところに居た軋間の、ひとは」
彼はそこで言葉をのみこみ、また空を見上げた。



————————————
9章の後「浄眼の海」の前の落書き。
派生と原稿の間に本編の調整をしてますが、皆暴走癖がついててえらいことになってます。
実はまだ会社。はやく家に帰りたいです……
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